ホンログ
読んだ本の感想やらを垂れ流す、よくあるアレ。 比較的マイナー志向なような、そうでもないような。 あと一応書店員ですが、あんまり関係なさげ。
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「幽談」 (京極夏彦/メディアファクトリー)
[No.106] 2009/01/06 (Tue) 02:28
![]() | 幽談 (幽BOOKS) (2008/07/16) 京極夏彦 商品詳細を見る |
京極夏彦さんの、読み逃していた一冊を。
薄墨を溶かしたような、枯淡の怖気。
どこか座りの悪い怪奇が上品な短篇集。
幽かな怪異、微かな機微。
うん――幽談、だ。
薀蓄構築積み上げて、迷宮の如き小説を創るのが京極さんですが、
ここにあるのは引き算の美学。
一筆書きみたいなさらりとした味わいが素敵でした。
「手首を拾う」
離縁した妻との記憶を辿りつつ、古宿で過ごす男の話。
枯れた風景と、擦り切れた心情が儚い怪談。絵的に綺麗。
「ともだち」
休暇をとり、かつて育った町に降りた中年の話。
京極さん流の論理で世を語ることで生まれてしまう哀しさ、みたいな印象。
「下の人」
ベッドの下に現れた大きな顔と、奇妙な同棲生活を余儀なくされるOLの話。
ちょっとコミカルで、ラストは仄かにやりきれない。
「成人」
いくつかの手稿から語られる、友人と雛人形を巡る謎の話。
実話怪談的な作風。明かされない部分が逆に恐いけど、もっと簡潔で良かった気も。
「逃げよう」
下校途中で、君の悪い「何か」に追いかけられる子どもの話。
焦燥感の中で、ぼんやりした倒錯と、強烈なイメージが巡る。一番異色だけど一番好き。
「十万年」
現実に違和感を感じながら生きる少年の成長記。
捻じくれているけど、優しい奇譚。これはこれで。
「知らないこと」
奇行を繰り返す隣人を観察する姉弟の話。
他に比べると直裁的なギミックかな。後半の眩暈感は流石のお家芸。
「こわいもの」
恐怖とは何かを己に問い続ける男の話。
京極さん自身の思考を辿っているような気分。考えさせられます。
洒落本や企画本でない、ちゃんとした京極さんの小説は久しぶりで、堪能しました。
幻想に耽溺するでも、絵的な恐怖を繰り出すでもなく、
「語る」という行為をひたすらに見つめることで現出させる異界。
伝統的でありながら、相当オリジナルな怪奇作家だなあと、改めて思います。
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